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日々の戯言など
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覚書話8 (覚書話7の続き)

人ごみの中、結局見失ってしまった背中に舌打しつつ、もどかしげに右手で慣れた番号を押していく。
短いコール音の後、「はい、もしもし?」と甘やかな可愛らしい声。
携帯から聞こえたそれに。

「ブルー、そこにいるよね!?」

名乗りもせず、用件のみを口にする。
どうせ名乗らなくとも相手にはこちらの番号が出ているのだ。
それだけで必ず相手がジョミーである事は確認できる。
案の定、電話口の女性は「ジョミー? 一体どうしたというの?」と正確に彼の名を告げる。
しかし、ジョミーの前置きもない唐突な問いかけに戸惑っているようだ。
そんな彼女に対して悪いとは思いつつも、事が事だけにとにかく早く代わってほしくて催促する。

「後で説明するから、とにかくブルーに代わってよ、フィシス!」


フィシスの番号にかける前に押したものは、相手の電話に繋がる事はなかった。
基本的に彼――ブルーは携帯の電源を切る事がない。
それは、平素彼が忙しい事もあるが、何よりも緊急の場合の呼び出しにも応じられるようにする為だ。
そんな彼が唯一電源を切ってしまう時がある。
今この瞬間のようにフィシスという名の女生といる時だ。
だからこそ、「いる?」ではなく「いるよね」と断言してみせた。
するとやはり。

「………何か問題でも起きたかい、ジョミー?」

電話口で何かをやり取りする声がし、暫くの間をおいた後、耳に心地よい少年の声音が流れてきた。

「ブルー? 今どこにいますか!?」
「何か問題が起きているのなら、このまま聞くが……」
「違います。生徒会は関係ない。それより、今ドコっ!?」

ブルーが予想した『学校に関するイザコザ』を否定して、怒鳴るように現在の位置を確認する。
そんなジョミーに、電話の向こうで相手が困惑する気配が伝わってきた。
けれどもそれに構う事なく立て続けに問えば。

「駅前のカフェ・テリアにいるよ」
「駅前の…って事は、“アヴェ・マリア”ですね?」
「ああ。一階のテラスに」
「分かりました。僕も今からすぐに行きますから、そこにいて下さい」
「ジョミー? 本当に一体どうしたんだい?」

何時になく焦った風な、それでいて有無を言わせない物言いにブルーの困惑は増すばかり。
そんな彼に対して、ジョミーは更に驚かせるだろう一言を短く告げると通話を切った。


曰く


「沙羅に、会ったんです」


―――と。

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