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続き。
運命の日。
強い風は木々をしならせ不気味な音を響かせていました。また、低く垂れ込めた雨雲のせいで昼だというのに辺りは薄暗く、何とはなしに不安を誘う、そんな日でした。
すぐにでも荒れてきそうな空模様に、人々も余程の用がない限りは外出を控え、窓の外を眺めながら静かに家出すごしておりました。
そんな中、王国で最も景色が美しいといわれている岬に2つの人影がありました。
1人は青年。
1人は少女。
青年は目の前に立つ少女の肩に手を置き、何事かを訴えていました。
対する少女は青年の言葉を拒否するかのように首を振り、悲しげに瞳を伏せています。
青年は言います。「共にこの国を出て欲しい。一緒に世界を回ろう」
少女は答えます。「私はこの国を護る巫女姫。愛する国を裏切る事なんてできない」
青年は言います。「君を愛しているんだ」
少女は答えます。「私も愛しているわ」
青年は言います。「それなら……!!」
少女は答えます。「でも、貴方が望む、それだけはできない」
ここ最近、何度も繰り返してきたやり取りです。
青年の言葉も、少女――巫女姫の答えも何時も同じです。
どれだけ青年が訴えても、巫女姫は決して首を縦には振りません。
青年は愛するが故に、巫女姫をこの国から、その役割から解放し、自由にしてあげたいと思いました。
この国を出て、外にある沢山のものを見せてあげたいと。
以前、何気なく言ったその瞬間に、彼女の心が揺れたのを知ってしまったが故に。
彼女の為に。
――彼女の為に?
いいえ、違います。青年は“自分の為に”彼女をこの国から連れ出したかったのです。
いずれ、巫女姫である彼女は昔からの慣習に従い、王の花嫁となるでしょう。
青年にとって王は友人です。王が巫女姫を心から愛している事も知っています。本来ならば笑って2人を祝福すべきなのだという事も。
けれども、それでも。
青年には姫を諦める事ができなかったのです。
巫女姫は青年を愛していました。
生まれた時から共に過ごしてきた王には感じた事のない、初めての想い、初めての恋でした。
それ故に彼から差し伸べられた手を取りたいとも思いました。
けれど、彼女は同時にこの国を愛していたのです。
自分を信じ、慕ってくれる沢山の民達を。
何よりも、喜びも悲しみも、何もかもを幼い頃から共に分かち合ってきた王を。
そんな彼等を裏切るような自分の心の揺らぎを、彼女は何よりも恥じました。
……巫女姫は青年を愛しいと思う感情よりも、自らの定めた大切な者達の為に在り続ける事を既に選んでいたのです。
平行線を辿るばかりの2人のやり取り。
その姿を離れた場所から見つめる一つの影がありました。
岬へと至る小道の手前で供の者達を留め、1人で足を進めていた青年。
探し求める人物と、図らずも一緒にいる見知った顔に驚きつつも、いつも通りの微笑で声を掛けようとした青年。
けれど、2人の穏やかならぬ雰囲気と耳に届いた切れ切れの言葉が彼の足を止めました。
『愛している』『このままでは』『世界を』『出て』『何故』『一緒に』『この国を』『裏切る』
どちらがどちらの言葉を発しているのか。
また会話としてどのようになっているのかはハッキリ分かりません。
頷いているのか、否定しているのか。それすらも。
けれど、元々2人の気持ちを知っていた王は激しく動揺します。
青年は巫女姫を連れて行ってしまうのではないか。
巫女姫は青年の手をとってしまうのではないか。
「そんな事は絶対にない」と思い続けてきた王ではありましたが、それでも心のどこかに「もしかしたら」という不安はずっとありました。見ないようにしていただけで、確かに彼の内に存在し続けていたのです。
その不安が、ここにきて急激に王の中で膨れ上がり、渦を巻き始めます。
そして。
王の渦巻く不安は、疑心は、次の瞬間、爆発したのです。
―――重なった、2つの影によって。
強い風は木々をしならせ不気味な音を響かせていました。また、低く垂れ込めた雨雲のせいで昼だというのに辺りは薄暗く、何とはなしに不安を誘う、そんな日でした。
すぐにでも荒れてきそうな空模様に、人々も余程の用がない限りは外出を控え、窓の外を眺めながら静かに家出すごしておりました。
そんな中、王国で最も景色が美しいといわれている岬に2つの人影がありました。
1人は青年。
1人は少女。
青年は目の前に立つ少女の肩に手を置き、何事かを訴えていました。
対する少女は青年の言葉を拒否するかのように首を振り、悲しげに瞳を伏せています。
青年は言います。「共にこの国を出て欲しい。一緒に世界を回ろう」
少女は答えます。「私はこの国を護る巫女姫。愛する国を裏切る事なんてできない」
青年は言います。「君を愛しているんだ」
少女は答えます。「私も愛しているわ」
青年は言います。「それなら……!!」
少女は答えます。「でも、貴方が望む、それだけはできない」
ここ最近、何度も繰り返してきたやり取りです。
青年の言葉も、少女――巫女姫の答えも何時も同じです。
どれだけ青年が訴えても、巫女姫は決して首を縦には振りません。
青年は愛するが故に、巫女姫をこの国から、その役割から解放し、自由にしてあげたいと思いました。
この国を出て、外にある沢山のものを見せてあげたいと。
以前、何気なく言ったその瞬間に、彼女の心が揺れたのを知ってしまったが故に。
彼女の為に。
――彼女の為に?
いいえ、違います。青年は“自分の為に”彼女をこの国から連れ出したかったのです。
いずれ、巫女姫である彼女は昔からの慣習に従い、王の花嫁となるでしょう。
青年にとって王は友人です。王が巫女姫を心から愛している事も知っています。本来ならば笑って2人を祝福すべきなのだという事も。
けれども、それでも。
青年には姫を諦める事ができなかったのです。
巫女姫は青年を愛していました。
生まれた時から共に過ごしてきた王には感じた事のない、初めての想い、初めての恋でした。
それ故に彼から差し伸べられた手を取りたいとも思いました。
けれど、彼女は同時にこの国を愛していたのです。
自分を信じ、慕ってくれる沢山の民達を。
何よりも、喜びも悲しみも、何もかもを幼い頃から共に分かち合ってきた王を。
そんな彼等を裏切るような自分の心の揺らぎを、彼女は何よりも恥じました。
……巫女姫は青年を愛しいと思う感情よりも、自らの定めた大切な者達の為に在り続ける事を既に選んでいたのです。
平行線を辿るばかりの2人のやり取り。
その姿を離れた場所から見つめる一つの影がありました。
岬へと至る小道の手前で供の者達を留め、1人で足を進めていた青年。
探し求める人物と、図らずも一緒にいる見知った顔に驚きつつも、いつも通りの微笑で声を掛けようとした青年。
けれど、2人の穏やかならぬ雰囲気と耳に届いた切れ切れの言葉が彼の足を止めました。
『愛している』『このままでは』『世界を』『出て』『何故』『一緒に』『この国を』『裏切る』
どちらがどちらの言葉を発しているのか。
また会話としてどのようになっているのかはハッキリ分かりません。
頷いているのか、否定しているのか。それすらも。
けれど、元々2人の気持ちを知っていた王は激しく動揺します。
青年は巫女姫を連れて行ってしまうのではないか。
巫女姫は青年の手をとってしまうのではないか。
「そんな事は絶対にない」と思い続けてきた王ではありましたが、それでも心のどこかに「もしかしたら」という不安はずっとありました。見ないようにしていただけで、確かに彼の内に存在し続けていたのです。
その不安が、ここにきて急激に王の中で膨れ上がり、渦を巻き始めます。
そして。
王の渦巻く不安は、疑心は、次の瞬間、爆発したのです。
―――重なった、2つの影によって。
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