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巫女姫は通常、王宮の敷地内にある神殿で生活をしており、公式の予定等でない限り、余り外にはおいでになりません。
そう、通常は。
けれどもこの時代の巫女姫は神殿や王宮の外――民達と触れ合う事を望み、側仕えの者達の目を盗んでは王宮を抜け出しておりました。
「神殿の中にいては分からない事がたくさんあるから」と仰って。
王も「それもまた然り」と巫女姫の行動を許容しておりました。
民達は立場に似合わぬ気さくな姫のおいでを大層喜んでおりました。
そんなある日の事。
巫女姫はいつも通り街を散策しておりましたが、思わぬことから片足を挫いてしまいます。
挫いた足はジンジンと痛み、立っていることさえ難しく、姫は道端に座り込んでしまいました。
姫の力をもってすれば瞬く間に完治するでしょうが、自分の不注意での怪我に神からの贈り物である力を使うのは躊躇われます。
しかし間の悪い事に、姫が座り込んだ場所はただただ畑が広がる場所。
通常ならば農作業をする民達がそこかしこに見受けられますが、何故か今は一人としてその姿が見当たりません。
暫くは誰か通りはしないかと待っておりましたが、どうやら難しそうです。
日も暮れてきましたし、このまま神殿に戻らなければ大事になってしまいます。
優しい王や側仕えの者達を心配させるのは本意ではありません。
痛みを耐えて立ち上がり、足を引きずりつつも先へと向かおうとした巫女姫ですが、途中でやはりバランスを崩してしまいました。
「倒れる」
衝撃を覚悟した巫女姫でしたが、一向に地面は近くならず、むしろ身体を支える力強い何かを感じます。
不思議に思い、首を巡らせた姫の目に飛び込んできたのは。
どこまでも晴れ渡った空のように鮮やかな蒼。
太陽の輝きを溶かし込んだかのように煌めく黄金の瞳。
――その、美しい二つの色に、姫は暫し目を奪われたのです。