忍者ブログ
日々の戯言など
[400]  [399]  [398]  [397]  [396]  [395]  [394]  [393]  [392]  [391]  [390
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

投下第3弾。

でもこれまだ過去の話で現代じゃないんだよね…。長いよ、過去話。



 


巫女姫を助けれてくれたのは、暫く前に王国へとやってきた青年でした。
彼は姫の足を診ると眉を潜め、おもむろに抱き上げました。
これには流石に姫も驚きました。
通常、例えそれが王であっても、男性が巫女に直接触れる事は許されていなかったからです。それは王国に住む者なら誰でも知っていることです。
驚き、止めさせようとした姫ですが、一人では歩く事さえ難しいのは事実。また、ためらいなく自分を抱きあげた事から、青年がこの国の者ではなく、来て日が浅いだろう事も分かりました。

姫は青年の行動に素直に感謝し、甘える事にしました。
勿論、人目につかないギリギリの所までという条件付で。

最初はお互いにぎこちなかった二人ですが、元々どちらも人見知りしない性格です。歩き出して暫くするとすっかり打ち解けて様々な話をするようになりました。

青年は自分が抱き上げた少女が巫女姫だと知って驚きましたが、一方で強く興味を惹かれました。
元々、青年がここへやって来たのは王国の不思議な力に興味があったからです。その最たる存在が目の前にいるのですから当然でしょう。

巫女姫も青年が最近外からやってきたのだという確信を得られ、興味を持ちました。
他にも外の世界からやって来た人々はいましたが、彼等は皆、彼女の“巫女姫”という立場に思う所があるのか、余り外の事を話してくれません。もしかしたら、一生国の外に出る事は叶わない巫女姫に配慮しての事だったのかも知れません。
けれど姫にとって、この王国から出られない事は物心ついた頃から“当然”でしたし、何よりもこの小さな王国をとても愛していました。そんな姫が見知らぬ世界の話を聞いたからといって、この国を出たいと思う事などありえません。
周囲もそれは理解しておりました。けれど、彼等はただ心配だっただけなのです。“巫女姫”ではなく、ただ“一人の少女”が。
―――叶わない事をそうと理解しながらも望み続ける事は、とても辛いものですから。
ともかく、話を聞きたくても聞けない事に少しの不満を感じていた姫にとって、“王国の巫女姫”を良く理解していない青年は話を聞くにはうってつけの人物だったのです。
それに何よりも、姫は彼の持つ色彩を気に入ってしまいました。
空とも海とも思わせる彼の髪と太陽の瞳は、姫が愛するこの国の色でしたから。


巫女姫は街へおりて来ると必ず青年の下を訪れるようになりました。
姫は彼から知らない世界の話を聞き、青年は彼女からこの国の様々な不思議を聞きました。
また、姫は青年から聞いた話を王にも離して聞かせましたので、王も姫を通して間接的に青年と繋がりを持つ形になりました。
その内、どうせなら直接青年から話を聞きたいと思い始め、彼を王宮へと呼ぶようになりました。

青年は巫女姫から聞いていた通り、明るく物怖じしない性格でした。また最低限の礼儀はわきまえつつも、王にさえ“普通”に接してくる、多分に変わった人物でもありました。
周囲の者達はこぞって「不敬だ」と青年を非難しましたが、姫以外に同じ年頃の、しかも“王”としてではなく接してくれる人間がいなかった王にとって、彼という存在はとても新鮮で楽しいものでした。

そうして、いつの間にか王と巫女姫と青年の三人が仲良く語らっている姿が、王宮のあちこちで見られるようになったのです。
PR
カレンダー
10 2025/11 12
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30
フリーエリア
最新コメント
最新トラックバック
プロフィール
HN:
愛羅
性別:
非公開
バーコード
ブログ内検索

忍者ブログ[PR]