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日々の戯言など
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4弾。まだまだ続く。



巫女姫は街へおりてくると必ず青年のもとを訪れるようになりました。
姫は彼から知らない世界の話を聞き、青年は彼女からこの国の様々な不思議を聞きました。
また、姫は青年から聞いた話を王にも話して聞かせましたので、王も姫を通して間接的に青年と繋がりを持つ形になりました。
その内、どうせなら直接青年から話を聞きたいと思い始め、彼を王宮へと呼ぶようになりました。


青年は巫女姫から聞いていた通り、明るく物怖じしない性格でした。
また最低限の礼儀はわきまえつつも、王にさえ“普通”に接してくる多分に変わった人物でもありました。
周囲の者達はこぞって「不敬だ」と青年を非難しましたが、姫以外に同じ年頃の、しかも“王”としてではなく接してくれる人間がいなかった王にとって、彼という存在は新鮮で嬉しいものでした。


そうして、いつの間にか王と巫女姫と青年の3人が仲良く語らっている姿が、王宮のあちこちで見られるようになったのです。





王と巫女姫と青年と。
共に過ごす時間が増えるにつれ、少しずつではありましたが、その関係に変化が現れるようになりました。
それは主に青年と巫女姫の間で。


3人で過ごす時間は楽しく得がたいものではありました。
けれども2人は意識しないまま“2人だけで”過ごす時間を望むようになっていたのです。


2人の心の変化にいち早く気付いたのは王でした。
今現在、彼等の一番近くにいて、尚且つ同じ気持ちで巫女姫を見つめている王が気付かないはずはありませんでした。
しかし、まだ未熟な主でしかなかった事と、例え自覚したとしても巫女姫と青年が互いの想いを成就させようとするとは思えない事。
そういったところから、あえて彼等の感情を言葉として示す事はしませんでした。
むしろ、気付かなければ良いと、そう思っていました。


気付いたところで、ただ苦しいだけの想いです。叶える事など到底出来ない想いです。
そんな苦しみを、彼等に味わって欲しくはありませんでした。



巫女姫はこの王国と民を捨てる事はできないでしょう。
それは彼女自身の立場のせいだけではなく、心の在り様の問題で。

青年も、巫女姫を連れ出す事はできないでしょう。
彼は、巫女姫がどれだけこの国と民を愛しく思っているかを知っています。
そして、友人である王がどれだけ巫女姫を愛しているのかも。


王は今のこの時間を何よりも大切に思っていました。
定められた運命とは言え、愛する少女が傍らで微笑み、様々な事を語り合える信頼する友がいる。
この時間が。この関係が。

故に、王は何も知らないフリをしました。彼等の間にある感情に、気付いていないフリを。
多少の変化が訪れたとしても、それは“今”の崩壊へと繋がる事はないのだと。
逆に、自分が告げる事でこそ壊れてしまうのだと。
そう信じて。



―――けれど、王の思いとは裏腹に、彼等3人の関係は緩やかに、しかし確実に、崩壊へと向かっていったのです。
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