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考え始めると、わりと延々と考えちゃうんだよねー(苦笑)
フェアローレンが最後まで『娘』を『イヴ』だと思っていたのかというと、そうではありません。
元々、本物のイヴと時間を重ねる度に微かな違和感を感じていました。
仕草や口調、行動など目に見えるものではありません。会話の内容や彼女の『記憶』が主な原因です。
以前、二人で話した内容を覚えていない、二人でした事を覚えていない。詳しく見ていけば忘れてしまってもおかしくない、本当に些細な事です。だからおかしいと思いはしても、フェアローレンもそれほど深くは考えませんでした。
これは『娘』がそうであるように仕組んでいたからです。
『娘』はいつかフェアローレンが本物のイヴに出会った時に、彼が不審に思わないようにあえて何という事もない話題や行動しかしないようにしていたのです。ほんの些細な事ならば忘れてしまっていてもおかしくないのだから、と。故に『約束』の類も一切しませんでした。
イヴが死ぬ一ヶ月ほど前。『娘』が死ぬ一ヶ月前とも言えますが、フェアローレンはその日初めて違和感の原因を知る事になります。
閉ざされた結界の中。知らず迷い込んでしまった美しい小さな箱庭で彼は出逢います。
藍の帽子をかぶり、ヴェールで顔を隠した一人の少女と。
一方、『娘』は宝玉を持たない彼が結界を越えてきた事に素直に驚きます。
しかし、彼は天界の長に愛された存在です。長のあらゆるものの欠片を与えられて誕生しています。
フェアローレンの意識がこの時、別のところに向いていた為、結界は微かな長の残り香とも言うべきものをとらえ、反応してしまったのでしょう。彼が普段の状態であったならばありえない事ですから。
『娘』はとにかく彼を『外の世界』に戻さねばならないと思い、彼の前に姿を見せます。
絶対に『イヴ』だとは解らないように気をつけて。
ヴェールで顔がわからないようにしました。立ち居振る舞いだって違います。唯一似ているのは声ですが、それとてトーンを変えて『違う』ようにしました。魂にも殻をかぶせてカモフラージュをします。
それなのにフェアローレンは気付いてしまいます。
気付いてはいけなかたのに。
この思いがけない再会が真実悲劇への歩みを進める結果になるのだとも知らずに。
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